米Microsoftが5月2日に発表した「Surface Laptop」には、教育機関、学生向けの「Windows 10 S」が搭載されている。Surface Laptopは、日本でも5月26日に発表会が行われ、7月20日から販売が始まる。

Surface Laptopは、13.5型のタッチパネルディスプレイ(2256×1504ピクセル/10点タッチ対応)を搭載した薄型ノートPCだ。上位モデルが14万6800円(Core i5-7200U、8GBメモリ、256GB SSD)、下位モデルが12万6800円(Core i5-7200U、4GBメモリ、128GB SSD)となっている。Core i7搭載版のリリースも予定されているが、こちらの発売は秋頃になる予定だ。

5月26日に行われた発表会では、Surface Laptopだけでなく、2in1タブレットの第5世代目となる「Surface Pro」、米国では2016年に発表されていた「Surface Studio」など、数多くのSurfaceラインアップの発売が正式に発表された。

今回は、このSurface Laptopに搭載された、教育機関や学生向けというWindows 10 SがどんなOSなのかを見ていこう。

●Windows 10 Sは教育機関などに向けた管理しやすいOS

Windows 10 Sでは、Win32のデスクトップ アプリケーションを動かすことが出来なくなっている。このほか、オンプレミスのドメイン参加ができなかったり、ブラウザのデフォルトがEdgeに固定されたりしている(他のブラウザをインストールして利用することはできる。Edge以外のブラウザーをデフォルトに設定することができないだけだ)。また、仮想化のHyper-V、Subsystem for Linux、AppLockerなどは動作しない。他のWindows 10とは異なる点がいろいろある。

アプリに関しては、Windowsストア経由でしかインストールできなくなっている。ただし、UWPでカプセル化したWin32アプリケーションは、Windows 10 Sにインストールすることが可能だ。WebサイトからダウンロードしたWindowsアプリケーションをインストールしようとしても、OS権限でインストーラが停止して、インストールすることはできない。つまりアプリは、WindowsストアからUWPアプリしかインストールできないわけだ。

アプリの入手をWindowsストアだけに限ることで、違法なアプリケーション、マルウェアが入ったアプリケーションなどがインストールされないようにしている。

米国では、PCの管理インフラとして、教育機関向けの「Intune for Education」が発表されたほか、「Office 365 for Education with Microsoft Teams」の1年間の使用権もバンドルされることが明らかにされている。日本国内では、「Office Home & Business 2016」のライセンスが付属する。

●Windows 10 Sを搭載した安価なPCも登場

Windows 10 Sのリリースに合わせて、Microsoftでは、Office 365 Personal(Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNote)などのWin32アプリケーションをWinodwsストアで提供できるように、Win32アプリケーションをUWPカプセル化するDesktop App Converterにかけて、UWPアプリ化してWindowsストアで提供する。また、Surface Laptopには、Minecraft Education版をバンドルする。

Surface Laptopは、Googleの「Chromebook」の対抗製品といわれている。Surface Laptopのほかに、Acer、Dell、HP、Samsung、東芝、富士通などから、Windows 10 Sを搭載した製品が発売される予定だ。Surface Laptopの価格は約13万円からと安くはないが、サードパーティー製のWindows 10 S搭載PCの価格は189ドルから(約2万1000円から)用意されるという。

189ドルという低価格な製品は、さすがにSurface Laptopほどの性能は持っていないだろう。ただ、米国の学生にChromebookが普及していることを考えれば、なんとか学生にWindows 10とOfficeを使ってもらいたいというのがMicrosoftの思惑だと考えられる。

Windows 10 Sは、教育関係者の場合、無償でWindows 10 Proへのアップグレードができる。また一般ユーザーでも、49ドルでアップグレードが可能だ(2017年中は無償でアップグレード可能)。

●学生向けのWindows 10 S、普及する可能性は

Windows 10 Sの機能を見ていると、Windows 10 Proにさまざまな制限を付けたOSといえる(簡易版Windows 10ではなく、内部的にはフル機能を持つが、Windows 10 Sとして動作が制限されている)。

米国ではChromebookが普及していることを思えば、Windows 10 Sの戦略はそれほど突飛とは思わない。Surface Laptopに関しては、高額な製品というイメージが強い。ただ、他のPCベンダーから低価格な製品がリリースされるなら、Chromebookに対抗できる可能も高い。

一方日本国内では、学生向けというコンセプトでWindows 10 Sが成功するとは思えない。日本のユーザーは学生であってもフルスペックの製品に対するニーズは強い。学校側が、学生のPCに関する管理面を考えて、Windows 10 Sを勧める可能もある。しかし、日本の学校では、学生のPCを一括管理するという考えを持っていないため、米国のようにIntuneなどと合わせた学校向けのソリューションとしてはうまくいかない可能性がある。

また、Windows 10 Educationとの違いをどのように明確化するのかが不明だ。Windows 10 Educationは、Windows 10 Enterpriseを教育機関向けにしたOSだ。機能としては、Windows 10 Enterpriseとほぼ変わらない。ただ、ライセンス形態が、教育機関を対象として一括でライセンスを与えるボリュームライセンスになっている。Windows 10 Sのような制限はない。

●Windows 10 Sは、未来の企業向けOSかも?

Surface Laptopに関しては、現在はWindows 10 Sプリインストールモデルしか用意されていないが、将来的にはWindows 10 Proをプリインストールして、企業向けに販売されるかもしれない。個人的には、ハードウェアスペックや超薄型のノートPCといったフォームファクターを考えれば、一般企業でもニーズは高いと思う。

秋以降になれば、LTE通信モジュールを搭載し、Always Connected PC(eSIMを搭載し、簡単に通信キャリアと契約して、いつでもPCがネットワークに接続できる)に対応したSurface Laptopも登場するかもしれない(Surface Proには、LTEを搭載した製品が秋以降にリリースされる)。このような通信モジュールを搭載したSurface Laptopなら、一般企業は導入を検討するだろう。

Windows 10 Sに関しては、多くの学生が使うようになるには、Windowsストアに学生がほしいと思うアプリが用意されていくのかが、大きな問題になる。

Microsoftもそのあたりの事情は分かっているため、SpotifyやiTunesなどのアプリケーションを、Windowsストア経由で提供できるようにUWPカプセル化を進めている。ただ、まだまだアプリの数は少なく、多くのユーザーが満足している状況とはいえない。

しかし、企業での利用ということを考えれば、セキュリティ面や管理面からある程度の制限がかけられたり、一括して管理できたりする仕組みがあることは大きなメリットがある。将来的には、Windows 10 ProやEnterpriseに、Windows 10 Sが持つさまざまな機能制限を付け加えられるようになるだろう。

実際、Windows 10 Creators Updateでは、アプリのインストールをWindowsストアからだけに制限する機能が用意されている。ただし、CD/DVDドライブからのインストールができたりするため、Windows 10 Sほどの制限はない。また、特定のアプリだけをインストールできるようにするなど、制限をグループポリシーで細かく制御することもできない。

こうしたWindows 10 Sが持つ機能制限などは、Windows 10が今後アップデートされていく中で、徐々にWindows 10 ProやEnterpriseに取り込まれるだろう。

Windows 7の延長サポートが切れる2020年以降には、Windows 10においてもデフォルトでWin32のデスクトップアプリケーションのインストールを禁止し、Windowsストアからのみアプリをインストールできるように変わっていくかもしれない。もしかするとWindows 8.1の延長サポートが切れる2023年以降は、Win32アプリケーションの動作が禁止され、UWPアプリもしくは、UWPでカプセル化したアプリケーションしか動作しなくなるといった可能性もある。また、アプリの配布も、Windowsストア、企業の場合は企業ストアなどを使うようになり、認証されたアプリしか動作しなくなるかもしれない。企業としては、アプリケーションのUWP化を計画したり、既存のアプリケーションをUWP化することを検討して行く時期にさしかかっているのだろう。

 

【関連記事】

Windows 10でサードパーティーウイルス対策ソフトを「一時的に無効化」も--MSが説明

スマホ向けタッチキーボードが使えるWindows 10プレビュー版「Build 16215」