先日リリースした「Windows 10 Fall Creators Update(以下Win10 FCU)」と同時に、Windows 10の新たなエディション「Windows 10 Pro for Workstation」の提供が始まった。

これはパフォーマンスや信頼性が必要な業務向けの最上位エディションで、提供開始に合わせて、DellやLenovoなどのPCベンダーから、Win10 WSが使用できるワークステーションがリリースされた。これらのマシンは、企業においてどのようなメリットをもたらすのだろうか? 今回はWindows 10 Pro for WorkStation(以下Win10 WS)の価値について、徹底的に考えてみる。

●CPUコア数と最大メモリ容量が増加した「Windows 10 Pro for WorkStation」

Win10 WSがWin10 ProやEnterpriseと大きく異なるのは、サポートするCPUソケット数と最大メモリ容量だ。

64bit版のWin10 ProおよびEnterpriseは、最大2ソケットのCPU、最大メモリ容量は2TB(32bit版は4GB)までになっている。Homeについては、CPUは1ソケットで、最大メモリは64bit版が128GB、32bit版は4GBとなる。

今回登場したWin10 WSは、最大4ソケットのCPUをサポートし、最大メモリ容量は6TBにまで拡張している。Win10 WSがサポートするスレッド数に関しては、明記されていないものの、Win10自体の最大が256Logical Processor(LP)となっているため、同じく256LPなのだと考えられる。

一方でWindows Server 2016は、ソケット数の制限がなく、OS自体がサポートするスレッド数が最大512スレッドとなっている。最大メモリ容量は24TBだ。

コア数が多いCPUとしては、18コア/36スレッドのIntel「Core i9-7980XE Extreme Edition」や、16コア/32スレッドのAMD「Ryzen Threadripper 1950X」などがある。ただし、これらのCPUは1ソケットでの動作が前提となっているため、Win10 WSのメリットを生かすためには、マルチソケットのシステムが必要だ。

マルチソケット対応のCPUは、クライアントPC向けの製品が存在しないため、2ソケット以上のワークステーションを構成するためには、サーバ向けのCPUやマザーボードなどが必要になる(サーバのハードウェアを流用することになる)。

サーバ向けのハードウェアなら、例えばIntelが提供するXeon Scalable ProcessorのPlatinum(以下Xeon Platinum)は8ソケット以上のシステムを構成できるし、Xeon Goldなら最大4ソケットまで使える(Xeon SilverとBronzeは最大2ソケット)。

ちなみに、Xeon SilverとBronzeでは最大コア数が制限される。Xeon Silverは最大12コア/24スレッド、Bronzeは最大8コア/16スレッドだ。最大メモリ容量については、Xeon SPシリーズ共通で、1ソケットあたり768GB(メモリの種類に依存)となる。

AMDのEPYCは、1つのCPUにクライアントPC向けCPUで使用しているRyzen(Zenコア)を4つ搭載したマルチチップモジュール(MCM)だ。Intelと異なり、最大2ソケットしか使えないものの、MCMにより、EPYCは最大32コア/64スレッドを実現できる(ソケットあたり最大2TBのメモリ)。

●OSのメリットを生かせるマシンは存在するのか?

こうしたCPUに対応する製品を考えてみると、例えばDell EMCのXeon Platinum/Goldを使用した「PowerEdge R940」がある。CPUやメモリ、ストレージなどの構成にもよるが、価格は最低でも1800万円ほどだ。確かにWin10 WSの真価は発揮できるだろうが、この価格のサーバを従業員向けのワークステーションとして利用するのは、さすがに現実的ではない。

Win10 WSがプリインストールされた2ソケット ワークステーションとしては、「Dell Precision 7920(7820)」がある。Xeon Goldを使用した2ソケット ワークステーションが50万円ぐらいから購入できるため、エンジニアリング ワークステーションなどの用途で数多く導入できるだろう。

CPUコアやスレッド数だけで考えれば、4ソケットをサポートするというWin10 WSのメリットは生かせない。2ソケットのワークステーションならば、Win10 Proでも問題ないためだ。最大メモリ容量でも差はあるものの、CADやCAMなどのアプリケーションでも、Win10 Proがサポートする2TBもあれば、十分な動作が期待できる。

●Win10 WSの登場で機能がダウングレードした「Win10 Pro」

スペック面以外のWin10 WSの特徴としては、フォールトトレランスな機能をサポートした新しいファイルシステム「ReFS」のサポート、フラッシュメモリをメモリスロットに挿す「NVDIMM-N」のサポート、ネットワーク上で高速なファイル共有を行う「SMB Direct」のサポートなどが挙げられる。

しかし、これらの3つの機能は「Windows 10 Fall Creators Update」以前から、Win10 Proでサポートされていた機能だ。実はWin10 WSのリリース時に、Win10 Proから機能が制限され、ReFSの作成が行えなくなったのだ(読み書きはできる)。

SMB Directについては、Win10 FCUのWin10 Proにおいてもサポートされているが、この機能を使うためには、RDMA(Remote Direct Memory Access)をサポートしたネットワークカードが必要になる。現状では、一部の10GbitイーサネットカードやInfiniBandカードなど、クライアントPC向けというよりも、サーバ向けで普及している印象だ。

このほか、NVDIMM-Nに関しては、Win10 Anniversary Updateからサポートをしているため、特にWin10 WSでサポートされた機能ではない。

NVDIMM-Nは、DRAMとフラッシュメモリを混載したメモリDIMMだ。もし、サーバやワークステーションに電源異常が起こり、ハードウェアの電源が落ちてしまったときでも、NVDIMM-Nがメモリスロットに搭載されている場合は、NVDIMM-NのDRAM領域から、フラッシュメモリ領域にデータをコピーする。

もちろん、その時間だけDRAMの内容を保持するために、バックアップ用電源(キャパシタ)も搭載されている。再度立ち上げれば、瞬断前の状態から作業が行えるのだ。

ただ、NVDIMM-Nは過渡期のテクノロジーで、今後フラッシュメモリの性能が上がれば、DRAMとほぼ同じアクセス速度で読み書きできる「NVDIMM-P(CPUが直接フラッシュメモリにアクセスできるNVDIMM-Nのようなもの)」が出てくるだろう。フラッシュメモリを使うことで、DRAMよりも大容量化し、消費電力も少なくなる。

Intelは、2018年には3D XPointを使用したOptane DIMMをリリースする予定だ。Optane DIMMがNVDIMM-P規格に準拠するのか不明だが、サーバでの利用などを考えれば、Windows Serverなどサポートされるため、同じカーネルを使っているWindows 10もサポートされることになるだろう(NVDIMM-P規格は、2018年に策定予定)。

将来的には、SMB DirectやNVDIMM-Nのサポートは、Win10 Proから削除され、Win10 WSのみでサポートされていくのだと思われる。そして、Windows Serverでサポートされている幾つかの機能が、Win10 WSに入ってくることになるのだろう。

とはいえ、Win10 WSは、Enterpriseエディションとも機能が異なる。実際、バージョン番号1709のWin10 WSには、Win10 EnterpriseがサポートしているEdgeブラウザをコンテナ化する「Windows Defender Application Guard(WDAG)」はサポートされていない。管理を重視するエンタープライズ領域をカバーするエディションではないということだ。

●「Win10 WS」の先行きは不透明

ここまでWin10 WSの機能を紹介してきたが、将来的にWin10 WSというエディションが存在するかは、まだ不透明だ。

Win10 WSが非常にニッチな市場に向けたOSとすれば、将来的には1つのエディションではなく、Win10の追加ライセンスとなる可能性が高い。Win10 Proを超えるCPUコアやメモリを使用するワークステーションは個人ではなく、企業での利用が自然であることを考えると、将来的には、Enterpriseエディションのオプションライセンスになるかもしれない。

現状、Win10 WSはPCメーカーからのみ提供されるため、ワークステーションにプリインストールされた状態でしか購入できない。よって、OS単体の価格は分からない状況だ。MicrosoftもWin10 WSの価格を明らかにしていない。OSのライセンスとしては“4コアまで”と“4コア以上”に分かれているようで、DellのWebサイトでは、4コア以上のCPUを選択した場合、追加のライセンス料として1万5000円が上乗せされる。

こうした事情を考えれば、Win10 WSは1つのエディションなのではなく、ワークステーション向けの機能を追加する、オプションライセンスと考えた方がいいだろう。

 

 

 

【関連記事】

Intel製CPUに特権の昇格の脆弱性、公式チェックツールがWindows/Linux向けに公開

コージャパンと日本マイクロソフト、共同で働き方改革を支援